北海道網走の前浜はオホーツク海から広がる流氷の海。流氷が自然の禁漁期間となって資源を育み、流氷が浅い海と深い海を混ぜ合わせるポンプの働きをし、深海の栄養を浅い海に押し上げる。
流氷に付随する植物性プランクトンが、豊かな栄養分を餌に、食物連鎖の起点となり、豊かな海を循環させる。
底引き網漁、定置網漁、ホタテ漁、延縄漁、刺し網漁、ウニ漁、様々な漁業が網走にはある。
初夏の網走港は
イバラガニ・釣りきんき・桜鱒
などで賑わう
私が訪ねた5月23日の朝、北網走地方卸売市場には、量は多くはないものの、様々な種類の水揚げが並んでいました。
イバラガニ、釣りきんき、桜鱒、うに、粒貝、カレイ類、しじみ・・・どれもうまそう!
ほとんどが地元と道内消費で消えるため、北海道の外にはほとんど出ないそうです。
釣りきんきは、東京にも送られますが、他の魚介類の多くは地元の加工業者や小売りが買っていきます。
私の相棒はマルホ阿部水産の阿部文英社長
私が最初に網走の阿部水産にコンタクトを取ったのは、イバラガニの内子を食べたかったからです。一般入手困難な幻のカニの、さらに内子だけを薄塩だけで味付けした、まさに究極の酒肴です。
メールでやり取りを重ねるに従い、実は網走にはマニアックな美味が色々あることを知り、現地を訪ねることとなりました。
今回の網走ツアーで水産関係施設を案内してくれたのは、もちろん、阿部社長です。メスのイバラガニは、殆どを阿部社長が落札していますから、イバラガニの内子は阿部水産以外では入手できないと言っても過言ではないです。他にも大量ではないものの、実に良いものを作っているのが阿部水産です。ちなみに、阿部水産では網走水揚げの蟹は全て扱っていますが、イバラガニが一押しだそうです。
今回の取材を機に、網走に水揚げされる様々な旬の美味をご紹介することで、意気投合した私(萩原)と阿部社長でした。
昭和35年5月創業のマルホ阿部水産
現社長の阿部文英氏の父、創業者の阿部豊治氏は昭和9年生まれ。
幼少期に両親が他界し、11歳から鮭鱒定置網漁・沖合底曳船・北洋鮭鱒漁・焼きちくわ工場などを、網走で経営していた伯父に世話になり、26歳で独立し、マルホ阿部水産を創業しました。
創業時から蟹の加工にこだわり、タラバガニ・アブラガニ・毛ガニ・イバラガニ・ズワイガニの網走産のカニ加工に携わって56年です。
マルホ阿部水産のイバラガニを獲ってくるのが興運丸。最新鋭の漁船だ!
網走でかに固定式刺網漁をする船は2隻のみ。今日は大漁
カニを網から外すのも大変!すぐに駄目になってしまうそうだ
網走の市場の競り場。オスのイバラガニと私
カニの種類と大きさにより、塩分と湯で時間も調整しながら最高の状態で茹で上げる
イバラガニ。実に美しい!
マルホ阿部水産のこだわり
阿部社長いわく、
『食材にこだわりを持つお客様に是非とも味わって頂きたく、原料本来が持っている旨味を活かす製法で商品を製造するのが、当社の基本です。』
阿部水産の商品作りには、4つのこだわりがあります。
鮮度
原料を網走前浜の鮮度の良い
網走産のみにこだわった商品づくり
自社工場
茹で加減、塩加減等、製造過程が
管理された自社加工での商品づくり
安全安心
塩のみを使い、食品添加物を一切使わない
製法で作られた商品づくり
トレーサビリティ
生産者(漁師)の顔がわかる、安心して買って
加工ができる原料にこだわった商品づくり
私が工場を訪ねた時は、生食用のホタテ貝の加工をしていました。少量多品目の加工を効率よくこなすため、大型の機械はなく、手作業で加工に勤しむ人を生かす職場になっていました。
網走をじっくり見たのは今回が初めてでした。 網走と言えば、網走番外地=網走刑務所のイメージが強かったですが、実際には官公庁や学校が多く、どちらかと言えばおっとりした印象でした。
ただ、博物館網走監獄は素晴らしかったです。女性観光客には?でしょうが、昭和のオヤジの心はしっかり掴まれてしまいました。監獄のリアリティと明治以降の歴史にあふれる施設は、まさに、一見の価値有り!の博物館です。
㈱食文化 代表 萩原章史
網走監獄博物館の
「五寸釘の寅吉」
像と私