脂ののった寒ブリを夏に食すための
伝統的な保存食
熟成した旨みとブリの脂が
唯一無二の味
「巻鰤」
- 石川・能登
古来より石川・能登で食されてきた「巻鰤」は、冬の時期の脂ののった寒ブリを夏に食べられるようにした保存食です。京都や加賀へ献上されるほどの珍味でした。
巻鰤は天然寒ブリを約半年間熟成させた発酵食品で、海の生ハムとも呼ばれています。 熟成することで旨みが強くしっとりとしており、ブリの脂の甘さを感じます。 塩味があるので、日本酒は欠かせません。
1年間で100本しか作れない貴重な巻鰤をご案内します。
途絶えた製法を
約10年かけて再現
この巻鰤を作っているしら井は創業90余年、昆布や海産物を主に扱っています。石川の郷土料理昆布巻は昆布の質が高く美味しいと地元からも観光客からも支持されているお店です。
しら井の白井洋子さんは石川の食文化「巻鰤」が伝統製法で作られていないことに疑問を持ちました。「伝統的な製法を残したい」という思いから過去の文献や人伝いに作り方を調べ、約10年かけてほぼ昔のままの作り方を再現しています。
当初は縄の巻き方がわからず干してる間に崩れてしまったり、干し加減がわからずカビが生えてしまい、新潟村上の塩引き鮭を参考にしようと現地に学びに行くなど試行錯誤を繰り返しました。
原料へのこだわり
11kgUPの大きな寒鰤と
能登の塩
ブリは極寒の日本海で大敷網で水揚げした天然の寒ブリです。サイズにもこだわっており成長するのに5年はかかる11kgアップの脂乗りの良いブリを使っています。産卵期前なので脂乗りもさることながら、身も引きしまった上質の身質です。
塩は地元から近い能登の海水を使って作られたものです。ミネラル分を多く含み、塩辛さのあとにすっきりとした後味が特徴です。たっぷりと使用し、脂乗りのブリを熟成させます。塩分濃度は約8%です。
さらに熟成の為に使う荒縄は天日干しの稲わらを使うので、わらの香りが広がります。
丁寧なシゴト
半年以上かけて
仕上がります
巻鰤の作り方
- 1月頃寒ブリ1尾を3枚卸にし、背と腹に分けます。1尾から4本の巻鰤ができます。
- 能登の塩を使い、2週間ほど塩漬けにします。
- 紐を通し、竿にかけて2週間程陰干しします。
- ブリをわらで包み、1本ずつ荒縄で強く巻き上げます。
- 2月頃、雪が降る中、外で干します。
- 約半年後、8月のお盆頃に仕上がります。
極上のブリの脂は
日本酒の酒肴や
お茶漬けもおすすめ
塩漬けしているのでもちろん塩味もありますが、半年かけて熟成した巻鰤は旨みがものすごく強いです。ブリの脂、熟成した旨み、能登の塩が奥深い味を作り上げています。
酒肴として、またお茶漬けもおすすめです。皮を剥ぎ生ハムのように薄くスライス後、軽く炙りわさびをたっぷりと添えてお楽しみください。
※腹・背は腹・背はお選びになれません。
※今回お送りするものは、干しあがった巻鰤の縄をほどき、中を検品した後に、パッキングし再度縄で巻いています。
文:食文化 大村花恵