高山さんの柚子ごしょう
旧・矢部村のほぼ中心部に高山さんの自宅兼工場はあります。
私が高山さんを訪ねたのは9月30日。
ちょうど、緑の柚子ごしょうの仕込みが本格化する頃です。
工場に近づくと、直ぐにそこが柚子ごしょうの工場だとわかります。あたり一帯は柚子の香りに満たされています。
旧・矢部村の厳しくも豊かな自然が育む柚子と唐辛子。
高山さんの柚子畑は、工場よりもさらに山中にありました。
沢蟹が豊富に獲れる沢の橋に車を止め、そこからは歩きです。
狭い山道の突き当たりに樹齢約30年の柚子が約百本。
“皮が命、農薬は使わんばい!”
高山さんの柚子は虫にかじられ、見た目は悪くとも、しっかりとした生命力を感じます。
高地の厳しい環境であるが故に、農薬を使わないでも育てることが出来ます。これが平地では難しいです。(農薬:栽培期間中不使用)
見た目が悪い柚子をたわわに成らせていました。
素材の柚子と唐辛子はもちろん農薬にたよらず栽培。見た目は悪いが力はあります。
この時ばかりは、近所のおばあちゃん達が高山さんの工場で朝から夕方まで手伝います。
新鮮な柚子を洗い、おばあちゃん達がひたすらに皮をむきます。
“若い子はようやりきらんたい!”
地道な仕事です。見た目は悪いが香り高い柚子は次から次へと、おばあちゃん達によって裸にされていきます。もったいないようですが、中身の果肉は全て捨てます。
柚子ごしょうの仕込みは殆どが手作業。
原材料は、収穫時期の都合で先に下ごしらえを済ませて保存しておいた唐辛子(福岡などの九州の一部では唐辛子のことを『こしょう』と呼びます)と塩と柚子の皮です。
18kgの柚子ごしょう 120gの瓶にして150本分を仕込むのに、大量の柚子が使われます。
柚子の皮は10kg およそ35kgの柚子が必要になります。
柚子が1玉50〜70gとして、600個前後の柚子を使います。
となると、 1瓶の柚子ごしょうに “600個÷150本=4個” もの柚子が使われることになります。
他に入れるのは、唐辛子と塩のみです。塩漬けにした唐辛子(こしょう)は4kg。
これが辛さの元です。
柚子ばケチると味が出んたい!
瓶詰めは高山さんの奥さんの仕事
『根を詰めても、1時間に60本を完成させるのが精一杯。朝から晩まで、手が空けば、瓶詰めをしています。』(女将さん談)
考えてみれば、大変な仕事です。うまいもんドットコムでは1万本以上の柚子ごしょうを販売していますが、女将さんの瓶詰め時間だけでも、167時間も掛かる計算です。
赤い唐辛子はつぶされて、塩蔵され、柚子が黄色になるのを待ちます。
私が訪ねた時期は緑の柚子ごしょうを仕込んでいましたが、柚子が黄色く色づく頃、赤い唐辛子と一緒に赤の柚子ごしょうが仕込まれます。
緑の柚子ごしょうの十分の一くらいしか作れない赤の柚子ごしょうは、毎年10月〜11月はじめにかけて仕込まれます。
高山さんは語ります、“そぎゃん大量には作れんばい”
5月初旬から入梅まで、高山さんは蟹漬け屋になります。
旧・矢部村に雨が降ると、冬眠から覚めた沢蟹が山道に出てきます。 その蟹を村人が拾い、高山さんが買い集めます。
生きた沢蟹を石臼でつぶし、塩と唐辛子を混ぜて仕込み、盆過ぎに麹を混ぜ、寝かせます。
理想を言えば3年。
じっくり寝かせば、古代の宮廷貴族たちも珍重したと伝えられる蟹醤(かにびしお)に進化します。
最低でも1年。蟹漬けはマニアックな酒肴、薬味、そして調味料に変身します。1瓶の蟹漬けには15匹もの沢蟹が入ります。まさに山の命を頂くのが蟹漬けです。
(文・株式会社 食文化 代表取締役社長 萩原章史)
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冬の食卓に欠かせない無農薬で作られるフルーティなゆずごしょう!
高山さんのゆずごしょうが「 ippin あの人の『美味しい』に出会う」で紹介されました